吾峠呼世晴短編集 感想
こんばんわ、三尾の狐です。今日は本当は別のマンガを紹介しようと思っていたのですが、読み直していたらこんな時間になりまして、また別の日にw
というわけで、今日は別のマンガをご紹介します。
吾峠呼世晴
大人気連載中・鬼滅の刃の作者さん。今作には鬼滅の前身・・・つまり元となった作品「過狩り狩り」と、今までジャンプ系雑誌で読み切り掲載されてきた三作品が掲載されています。
過狩り狩り
2013年第70回JAMPトレジャー新人漫画賞に投稿され佳作を受賞。現在連載中の鬼滅の刃の元となった作品で、登場キャラが鬼滅のキャラによく似ている。
体から刃物を出せる西洋人の姿をした鬼が登場し、それを西洋服を着た日本人の鬼と珠世と愈史郎(鬼滅と見た目と関係が一緒)が協力して倒そうとする話です。最後には片腕盲目の剣士が出てきて、西洋人の鬼を瞬殺。
その剣士の過去の情景と、現在で起こっていることが交互に描かれています。鬼滅に比べ、なんだかちょっと不気味な雰囲気です。ハンデがあっても他より強い人を描きたかったそうな。鬼に関しては、和風なドラキュラをイメージしたそうですよ。
文珠史郎兄弟
少年ジャンプNEXT2014に掲載された読み切り漫画。雑誌掲載という意味ではデビュー作です。裏表紙では異色作と紹介されています。
「文珠史郎一族」という有名な殺し屋の青年に少女が依頼をするところから始まります。その少女の無機質感や、青年・馬畝のイかれた感じが「おう、これぞ吾峠!」という印象です。
少女が連れられた家でピアノを弾いている青年・聖正が表紙のキャラクター。
この聖正のピアノに対する異常な執着がこれまた吾峠さんらしい!できることならピアノを引く以外のことをしたくない、食事排泄睡眠を含め。しかし食べなければクラクラする、食べれば排泄する。食べるためにはお金がいる。お金は働かなくては手に入らない。そもそも二千万円のピアノが欲しい。だから働く。
この思考回路、鬼滅でもよく見かけますね。人間の持つ欲というものの異常さ。
標的の家に侵入した二人。馬畝はカマキリのような姿になり警備のものを殺す。(言動がやっぱりイかれてる)聖正は喉に虫を飼っており、その虫が発する音で人を倒したり、変声機のようにして相手を操作する。けっこう一方的な虐殺です。
この文珠史郎一族は、人間ならみんなが体に住んでいる虫を浮かさせ、その特殊な力を使って殺しを行うそうな。腹の虫、とか虫の居所、とか慣用句や諺によく出てくるでしょう?あの虫です。あれをふ化させるんだそうな。
この設定の作り方も吾峠さんの癖を感じますね。異色作と書かれるのも納得の内容です。
肋骨さん
週刊少年ジャンプ2014年39号に掲載された読み切り漫画。
人間の感情を見る力を持つアバラが主人公。「邪気」が張り付くと人間はおかしくなり、アバラはそれを払う「浄化師」です。基本的にはデコピンで浄化します。
人間の髪に異常な執着をし、「邪気」に取り憑かれてしまった女性が多くの少女を監禁する事件が起きます。感情が視える力で犯人を割り出し、アバラは「神器・羽衣」を使い、犯人と戦います。
犯人は長い黒髪を持つ女性で、毛先が無数のはさみのような形状になり、見えない刃をとばして遠隔攻撃をしてきます。この激戦のさなかでお互いの心情を語り合ったり、打開策を探ったりというのが、鬼滅を感じさせますね。
犯人の女性、髪に対する愛情が狂気そのもので、髪を切れば切り離された先は死んでしまう、人間が年老いたら白髪になり美しくなくなってしまう・・・。それなら、美しい髪を持つ人間を殺してしまえば、ずっと髪は美しいままでしょう?という人です。
相対するアバラも若干狂っています。善人だった命の恩人を差し置いて自分が生きていていいわけがない。自分が死んでも悲しむ人はいないから大丈夫。っていうひとです。笑顔が無機質。
そんなアバラが、この事件で助けた少女に「誰にも望まれていないのなら、せめて自分くらいは自分を大事にしてあげて」という話をされ、改心するところで話が終わります。
心の変化の描き方、その繊細さと荒治療っぽさも、彼の魅力ですね。
ちなみに、アバラの守護精霊として河童が出てきます。河童可愛いね河童。
蝿庭のジグザグ
週刊少年ジャンプ2015年25号掲載の読み切り漫画。
「自分のことは自分で」が信条の主人公・ジグザグが植物を愛でながら、依頼人らしき人と電話で口論しているシーンから始まります。道中、顔見知りのおばあさんとの会話でも「人に甘えず自分で頑張りや」と非他力本願全開。植物好きも前回です。
主人公の人格が最初の数ページだけでも掴むことができ、かなり読みやすい話です。絵もかなり見やすくなりましたしね!あと、単純にキャラが好き。連載してくれればよかったのに。
この話は「呪い」がテーマです。首つり自殺が大量発生している市が舞台で、その原因究明を依頼されます。おばあさんの知り合いの死因が首つりで、それをきっかけに事件解決へと進んでいきます。
今回の異能は「木」と「呪い」です。なくなった方の体に種を植えると、呪力を吸って木が生える。そしてその木から呪力をためた実が落ち、それが術者の元へ案内してくれる。武器は木で形成されたハンマーで、手のひらに浮かんだ「槌」の文字から生えてきます。この演出の描写が良き。
犯人は依頼を受けて人を殺す「呪殺師」で、対象に「首を吊って死ね」というと、言われた相手は首つり自殺をしてしまいます。
その現場を突き止めたジグザグは相手の口に種を投げ入れます。すると相手の口から気が生え、そこから新しい種が落ちる。この種が相手の呪力を吸うらしく、相手は術を使えなくなる。
戦闘らしい戦闘シーンはありませんが、相手を追い詰めるときの淡々として若干哲学者ポイ言い回しのジグザグ、結構好きです。あ、彼ね敬語混じりの関西弁なんですよ。萌えポイントです。表情も常に余裕があって、微笑と無表情の間の顔が多い。
戦闘が面白い漫画、というよりは相手との会話を楽しむマンガかな?設定もキャラもよいので、連載にしてくれてよかったんですよ?www
おわりに
あとがきを見ると、文珠史郎とジグザグは連載用の設定がしかっりあったそうです。それでも選考に通らず、読み切りに仕立て直して掲載されたそうな。そこから最初に戻って、改良し、連載決定とは・・・。読み切り三作品にも鬼滅の原点がいっぱいあるように思えます。読み切りの良いところを研磨して生まれたのが鬼滅の刃だと考えると、吾峠さんは努力と研究の人、なのかもしれませんね。
吾峠呼世晴の魅力と癖を再発見できる短編集でした。